何が出来るか、ではなく、何が良くなるのか?

コンピュータ用のソフトウェアの売り文句で「○○が可能!」をよく見かける。これはコンピュータ業界では昔からある言い回しだし、自分が提案書を書く時にもあまり気にせずに使っていた記述だし、コンピュータ業界以外だと家電品とかの広告でも結構みる事がある言い回しだ。
 
ある日ふとこの言い回しを広告で見た時に違和感を感じた。この違和感はなんだろうと考えてみたら結局次のような自分なりの結論になった。
 
「機能が増えたからと言って、それがユーザーの利益になるとは限らない」
 
コンピューターの性能が低い昔は「機能が増える=ユーザーの利益」という事も多かった。が、十分にコンピュータの性能が上がり、色々な機能も昔よりははるかに容易に作れるようになった今「○○が可能(こんな機能があります/増えました」というアピールの方向は、既に過去の物になっている。
 
ここ数年で売れているプロダクトを見れば分かるが、アピールポイントは「どんな体験が出来るか?」という点を絞ってアピールしてきている。それが技術の発展やそれに伴う機能や性能の増加にあるとしても、それを全面に出してきてはいない。しかし、ほとんどのプロダクトは前述の機能羅列アピールのままである。
 
これはどういう事かというと、結局「ユーザーの目線と利益で考えていない」という点に行き着く。「いや、考えてるから機能を増やしたりしてるんだ」という主張もあるかと思うが、それは開発する側の「ひとりよがり」でしかないように思う。ユーザーに寄り添って考えていれば、上述のようなアピールになるはずだからだ。
 
「機能が増える」「性能が上がる」という点はアピールする点としてとても思いつきやすいし、作る側の内部的にも明瞭である。しかし、残念ながら「何故それをするのか?」「誰のために、何のためにこれを作るのか?」という視点が決定的に抜けている。
 
これまで記述した点に自分で思い至ってからは、極力気をつけるようにしている。やはり、こういった点に留意して進められたプロジェクトは後々の手戻りが少ないし、目的が明確になるので品質も良い。内部ではなかなか理解されなかったりで辛い局面も多々あるが、今後も継続していこうと考えている。